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「月刊コミックビーム」15周年記念作品 アベックパンチ

2011年6月18日劇場公開

プロダクションノート

「イサキとヒラマサ――僕の友だち」

監督:古澤 健

もともとタイム涼介さんのマンガのファンだった。ちょっと斜に構えながら実は純情で不器用な登場人物たちの言動はまるで自分の思春期の頃のように感じていた。
まさか、自分のところに『アベックパンチ』の実写化の話が来るとは思ってもいなかった。無謀だと思った。マンガという表現として完成されたものを、どうやって映画にすればいいのか。
映画化が決まってから、タイムさんと横浜の街を歩いた。マンガのモデルになった場所を、2人して回ってみよう、と。数時間かけて、海沿いの公園から、荒んだ路地を抜け、小高い丘の上まで歩き、とりとめもなく喋り続けた。そのあいだ、タイムさんは決して「このマンガのテーマは……」というような語り方はしなかった。ある場所では「イサキはここを走るんですよ」と言い、別の路地では「ここらへんでヒラマサは喧嘩するんですよ」と思い出のように語る。すれ違う人ごみの中にイサキやヒラマサがいる、と感じた。イサキやヒラマサは、タイムさんにとって実在の友人なのだ、と。 マンガの映画化、ではない。イサキとヒラマサのドキュメントなんだ、とわかった。一見バカバカしいように思われる設定があったとしても、イサキとヒラマサの魂に忠実であれば、どんなことが起きたって信じられる。
一方で、現実的な問題もあった。“アベック”という架空のスポーツを、生身の人間が演じなくてはならない。マンガという表現であれば、技と技とのあいだの体の動きは省略してしまえる。しかし動きそのものが表現のメインとなる映画ではそうはいかない。
ということで、まずは助監督たちと一緒に実際に手をつないでみた。平日の昼間の公園で、大の大人たちが手をつないで、へっぴり腰でパンチやキックを繰り出す様を、幼稚園児たちが不審な目で見ていた。あの日、僕は正直心が折れるのを感じた。手をつなぐことで動きは不自由になる。マンガではカッコよく見えた「アベックパンチ」だって、体格が違う者同士が組むことになれば、腕のリーチの違いからどうしたって不格好になってしまう。
不安な気持ちを抱えたまま、オーディションの日を迎えた。その日、実はもうアクションのことは頭になかった。イサキやヒラマサのようなまっすぐな魂を持っているかどうかを見極めよう、と思った。その先は……わからなかった。
が、心配は杞憂だった。オーディション会場には、本物のイサキとヒラマサ、メバルにエツ、コルビーナも来ていた。とても身近なところにカジキまでいた。そして、彼らは、僕の貧困な想像力を軽く凌駕してくれた。アクション練習で、彼らは次々と独自の技を生み出していった。アイディアを出しあい、呼吸を合わせ、お互いを生かすことによって、魅惑的な技を繰り出す。目の前で“アベック”という架空のスポーツが、実在のスポーツとして誕生していった。
撮影現場で僕は、彼らの友情と闘いを記録する役割に徹するだけでよかった。
改めて思う。イサキとヒラマサ、メバルとエツは、実在の人物である。






〜冗談が本当になるまで〜

原作:タイム涼介

もう十年も前の事だろうか、ふと考えた。
もしデート中に不味いヤカラに絡まれたらどうしよう。
勿論そんなトラブルは極力避けて通るのが基本だが、
話し合えない相手と対峙したなら……。
ヒールを履いた女の子を連れて逃げ切れるのか?
自分一人で彼女を守れるのか?
そんな事を一人ぼっちで歩きながら考えた。
それはさておき、さらに深く掘り下げてみる。
そもそも女の子と言えど赤ちゃんではないし胡蝶蘭でもない、
工夫次第で立派な戦力になりえるし、はなっから、
守られる気などないかもしれない。

まあ現実にはまず難しいだろう。でももしそんな護身術が
あったなら、あってくれたなら……。
ただそんな冗談みたいな思い付きでした。

恋愛も結婚も結局は果てしなき協同作業であり共闘作戦だ。
トラブルや困難に直面したとき手を取り合って乗り越えられるか
あるいは愛ゆえに手を切り縁を切るか……。
それがひとつの試合に凝縮されたのがスポーツアベックだと
一人ぼっちで考えた。

いや今は一人じゃないよ。だからさ。少しはその辺が見えてきて、
それでアベックパンチの連載を描き上げられたわけです。
それがまさかの映画化じゃないですか。

自分だけの力じゃありません。始めは僕の馬鹿げた思いつきだけど
いつの間にか沢山の人達が賛同してくれて皆のモノにしてくれました。
主人公達同様に滑稽な事ほど必死でやるべきなんだね。
冗談が本当になるまで。

原作:タイム涼介

『月刊コミックビーム』2011年4月号
「エレクトNo.1 映画『アベックパンチ』撮影秘話」より

月刊コミックビーム編集長:奥村勝彦

あー。やたらめったら年明けの寒い日。前日の試合場面収録の日も寒かったけど、輪をかけて寒かった。タイム氏と夕方6時に現地で待ち合わせしてたんで、6時ちょうどに現地着。だけんどもタイム夫妻と俺以外、誰もいねえ。プロデューサーの美輪君から電話があって、直前の撮影が伸びて現地到着が遅れる模様。なんか大変そうやなあ。
待つこと1時間。スタッフが続々と到着する。クソ寒い屋外の撮影、照明のセッティングが出来るまで、ヒラマサ役の鈴之助君とウダウダ喋ったりして時間待ち。1時間ほどで準備完了、テスト開始。俺らはチャンピオンにまとわりつくマスコミの役なんで、セリフなんで一言ずつなんで平気だったんだけど、大勢で動くシーンなんで、結構タイミングが難しい。7〜8回繰り返して、やっと本番。3回ほどテークして、どーにかOKかなーって思ってたら、古澤監督は気に入らなかったようで、アングルとセッテイングを変更して、更にテスト→本番。終了した時は、終電間際。最後の撮影まで付き合おうと思っていたんだけど、このままだと明け方までかかりそうだと言われたんで、泣く泣く先に帰らざるを得なかったわけです。結局、2カットで4時間!!
帰りにタイム氏とも話したんだけど、映画って大変だなあ。滅茶苦茶大変。そりゃ漫画も大変なんだけど、大変さの質が全然違う。一言で言えば団体競技と個人競技の違い。こっちは最少人数で孤独にシコシコ勝負。向こうは集団で統率をとりつつ総合力勝負。同じメディアなのに必要な能力がかなり違うなあ。いやあ本当に面白かったし、勉強になりました。