TOP > 歴代受賞作品 > 第18回 ライトノベル ファミ通文庫部門
歴代受賞作品
インフォメーション
応募総数
619作品
最終選考候補
4作品
総評
川崎拓也
(ファミ通文庫編集部 編集長)
応募作品の傾向としては去年から引き続き、何某かのジャンルに偏ることなく「異世界転生or転移」「学園ラブコメ」「部活もの」「異世界ファンタジー」「青春エンタメ系」とバラエティに富んだものとなっていました。これを書いておけば鉄板という時代ではなくなっているので、その状況を反映してか色々な趣向を凝らした応募作が多かった印象です。ただ、全体的に書き手の表現したいものが曖昧で『なんとなく』ライトノベルっぽくなっしまっているだけの作品も少なくなく、その点は次回に期待したいと思います。今回の受賞二作品は、どちらも著者の目指していることが明確で上手く表現できていて、エンターテイメントとしても優れたものとなっていましたので選ばせていただきました。
受賞作品
◆優秀賞 賞金50万円
『リンドウにさよならを』
★作者:ぼたんちえ
プロフィール:6月9日生まれのA型。九州で生まれ、関西で学生時代を過ごし、関東で働いていましたが、現在は再び九州に住んでいます。趣味は読書と植物を育てること。好きなものは甘味全般。育てた植物の傍で本を読みながら甘いものを食べるのが、至福の時です。
★受賞者コメント
このような名誉ある賞をいただけたことが、未だに信じられません。何度も着信履歴を見返して、ほっとする毎日です。歴代受賞者の皆様と同じ舞台に立つことができるという夢のような幸せをしっかりとかみしめつつ、気を引き締めて、精進することを忘れずにいたいと思います。関係者の皆様、本当にありがとうございました。
★作品内容
想いを寄せていた少女、襟仁遥人の自殺を止めようとして死んでしまった神田幸久。生に未練などない――そう思っていた幸久だが、気づけば彼は教室にいた。自由で退屈で孤独な日々を過ごすことになった幸久は、ぱっとしない女子・穂積美咲に興味を持つようになる。襟仁と同じようにいじめに遭う穂積をただ見ていることしかできなかった幸久だが、ある日突然穂積が幸久に気づき、友達になってほしいと頼まれる。一緒に過ごす時間の中で穂積の愛らしさを知った幸久は、彼女の力になりたいと考えるが、イメージチェンジをしても、勉強をがんばっても、なかなか穂積の状況は好転しない。そんな折、ひょんなことから穂積と仲良くなった高木と、幸久の幼馴染である守の協力により、穂積は徐々にクラスに溶け込んでいくのだが……。必然の出会いが紡ぐ、学園青春ストーリー。
【選評】川崎拓也(ファミ通文庫編集部 編集長)
教室の一番後ろにいる幽霊と、クラスの中で孤立してしまっている女の子の出会いから始まるストーリー――こんな作品を応募されたらファミ通文庫から出さねばいけないに決まってるじゃあないですか。愛すべきキャラクターたちが織り成す青い春が詰まった学園群像劇として大変面白い作品でした。派手な内容ではありませんが、丁寧な描写、キャラ配置、そして展開の盛り上がりと伏線の張り方、すべての要素において今回の応募作の中では群を抜いて高いレベルで組み合わさっていました。中でも地に足の着いたキャラ造形は素晴らしい。満場一致で受賞です。
◆特別賞 賞金15万円
『チート勇者を倒すゲスな方法』
★作者:笹木さくま(ささきさくま/応募時PN:夏希のたね)
プロフィール:北海道生まれ、でもカニは好きじゃないと言うと、大抵の人にもったいないと怒られます。聞かれて困る質問は「一番好きな漫画はなに?」です。ジャンル別なら答えられるのですが。
★受賞者コメント
初心にかえって好きな物を好きなように書いたものだったので、まさか賞をいただけるとは思いませんでした、本当にありがとうございます。心機一転、頑張らせて頂きますので、どうかよろしくお願い致します。
★作品内容
高校生の外山真一は、いきなり剣と魔法の異世界に召喚された。目の前にいるのは「蒼の魔王」を名乗る巨人! あまりの迫力に死を覚悟した真一に、魔王はいきなり土下座して頼み込んできた「何度殺しても蘇ってくる、厄介な勇者共をどうにかしてくれ!」と――。なんでも、魔族はおいしい食料を求めて人間界に来ただけで、人間に危害を加えるつもりはないのに、勇者達に襲撃され困っているという。しかも勇者達は殺しても翌日には蘇り、毎日挑んでくるらしい。蒼の魔王の脅しと、可愛い魔王の娘リノに頼まれ、真一は勇者達の撃退に乗り出すが……。勇者達が二度と魔王を襲わないよう、真一が考えだしたのは大変ゲスな秘策だった――。人類の裏切り者となった少年がチート勇者達の心を折る、奸計閃く異世界ファンタジー、登場!
【選評】川崎拓也(ファミ通文庫編集部 編集長)
流行を意識したタイトル、そして内容をまさしくズバリ表現できているということでコンセプトに優れた作品でした。主人公が魔王側に与するというのは、昨今では珍しいアイデアではありませんが、彼がとる手段のゲスっぷりにおいて他作品ときっちり差別化が図れていたと思います。主人公が魔王側に付くことになった大きな理由である魔王の娘リノも登場シーンはあまり多くはないものの可愛く魅力的に描かれて素晴らしい。もっとリノのシーンが多ければ賞も変わったかもしれません……もっとリノを出せばいいのに! リノ出して!! 改稿に期待しております。
◆東放学園特別賞 賞金5万円
『パンドラの種』
★作者:こまち ちか
プロフィール:埼玉県出身11月14日生まれ、東放学園にて演劇を学びたくさんの芸術に触れて卒業しました。趣味は物語を作ることとミュージカル鑑賞です。感動物を見てぼろぼろ泣くのが実は好きだったりします。
★受賞者コメント
まさか母校の名前が入った賞を頂けるとは夢にも思いませんでしたので、とても驚きました。初投稿の作品でこのように評価を頂けて本当に嬉しい限りです。これを次の糧にしてこれからも精進して参りたいと思います。
★作品内容
その昔、人間はパンドラの箱を開けてしまい世界に災いを広げてしまう。しかし同時に飛び出した希望の種によって人間は異能力に目覚め、その力で災いを封印した。そして時は流れ、特別な未来視の力を持つ高校一年生の藤目千優は、ある日回避できない死の未来を視るが、「縁切り」という力を持つ円霞清太郎と出会い、その未来を回避する。しかしその後、彼女の周りで、未来を視た者は五日以内に必ず死に至るという『災いの種』と呼ばれる死の現象が連続して発生する。千優は死の連鎖を止めようと円霞に協力するのだが……。様々な葛藤や思惑が錯綜する異能力学園青春ストーリー。
【選評】川崎拓也(ファミ通文庫編集部 編集長)
パンドラの箱と希望をモチーフにした青春群像劇。派手さには欠けるものの、悩みを抱えながらも、死に至る現象に向き合っていく主人公の千優や清太郎やその周囲の人々が上手く描かれていました。ライトノベルにしては重めな背景を持ったキャラクターたちではありますが、その複雑に絡み合った関係が織り成す物語は読み応えがあり、それゆえに結末では、心にすっと沁みていくような澄んだ読後感を与えられたのだと思います。このキャラクターたちの「この後」を読みたいと思わせる素晴らしい作品でした。