次世代楽曲フェア 次世代ボカロ曲小説コンテスト






優秀作品発表







 今回集まった作品の数々はどれも素晴らしくとても迷いましたがその中でも特にピンと来たものを選ばせていただきました。
 コンテストに参加してくださった皆様、本当にありがとうございました。
 選ばれた方々はおめでとうございます!
 いい作品になっていると思いますのでぜひお手に取ってみてください!

 「ヘイセイ」の名にふさわしい、自由な発想の多彩な物語が集まりました。裏世界や平成スナイパーズといった設定の解釈もそれぞれでまったく違うストーリーが出来上がっているのは、深くて複雑な世界観があるこの曲だからこそだと、楽しく悩ましい選考でした。
 ただ、アイディアが面白いのに物語として中途半端になっていたり、逆に小説としてはよく書けているのに楽曲解説からちょっと広がりが足りなかったかと思うものもありました。その中で今回選ばれたのは、両方を兼ねそろえている作品で、曲にまた新しい魅力が加わるに違いありません。

 時戸白(ハク)が、中学生の頃から毎晩見る悪夢。それは、会ったこともないレイとサクヒが互いに殺し合うものだった。この二人は何者なのか、なぜ夢に出てくるのか、ハクにはまったく心当たりがなかった。
 この世界を構成するのは、現代世界に近い<表世界>と魔法が一般化した<裏世界>の二つの領域。互いに密接した存在でありながら違った形で文明が発達したため、非常に不安定な状態が続いていた。その不安定さが人類に影響をあたえ、戦争や多くの犯罪が横行する原因にもなっていた。
 そんななか、悪の組織が世界に闇魔法をかけ、混沌に陥れてしまう……。ハクの見る夢は何を示しているのか、彼女たちが果たす役割とはなんなのか。
 世界を平和に戻すために立ち上がった少年少女たちの戦いが始まる。


 ウィットに富んだ言葉選びでトウを描いた「煩い子守唄を歌う君と」、"死"にフォーカスしトウの苦悩を綴った「アクアブルーに微笑みを」、第三の主人公の登場に新たな切り口を見せた「キミはボクの××番目のエラー」、地上と深海2つの視点からトウの生き方を書いた「深海ラボ」、お手伝いロボ目線から純真無垢なトウを描いた「循環少年」、優秀作の中で最もお手伝いロボに迫った「From深海定期報告」……いずれもキャラクターが生き生きとドラマチックに輝いていました。さまざまな展開に添えられたトウの笑顔が、どの作品も印象的です。

 今回のコンテストは、皆さん大変バリエーションに富んだ設定や展開を考えて下さっていたのが印象的でした。楽曲では、何故ラボが深海に建てられたのか、また何故トウは循環を繰り返し、『人間』を造り続けるのか、といった部分は謎のままです。そこに皆さんの多彩な解釈が織り込まれることによって、世界観がより深く魅力的になっていました。
 今回選ばれた作品はどれも、楽曲の「謎」に個性的な「答え」を与えてくれているものばかりです。是非、文庫化された作品をお楽しみ下さい!

 いまから100年ほど先の、どこか深い海の底。建設途中で放棄された深海開発・研究のための「アクアラボラトリ」で、その少年型ロボは活動していた。
 人間のような高度な知能を持ち、自分を人間と信じている彼は、寂しさから、手元に残された資料をもとに「人間」の複製を試みる。しかしそれは、耐久年数が短いため施設開発と同時に次の世代を作るようにプログラミングされていた結果であり、まぎれもなく自分自身を複製することだった。
 ロボットの寿命は10年。自身を複製し終えた瞬間に壊れるというループをもう10回も続けてきた。これからもロボは自分を人間と信じて知識を吸収していき、自分の複製を作り続けては死んでゆく。
 そしてトウは壊れる直前に、このループと自分の置かれていた状況を悟るのだった。


 テーマが抽象的だったこともあり、曲の解釈を掘り下げた作品と、曲を下敷きにして独自の世界を描き出した作品が混在する、大変面白いコンテストでした。その分選考は非常に悩ましかったのですが、読んでいく中で物語に引き込む力を特に感じた作品を選ばせて頂きました。
 なぜ世界がこうなったのか、この世界で何を見出せるのか、そこで人々は何を思うのか、そういった、文面以上の流れを感じさせる作品たちだと思います。

 コンテストにご参加頂いた皆様ありがとうございました。
 受賞した4作の他、残念ながら落選となってしまった作品、どれもユーザーの皆様独自の解釈が非常に面白い力作揃いでした。millstonesさんの巧みな音使いで生み出された儚い世界観にユーザー独自の解釈が織り交ぜられ、産声を上げた新しい物語の数々。その中から選出した4作品にはそれぞれあるテーマが散りばめられています。
 そのテーマもちょこっとだけ気にしつつ、是非『クロライドに没む』をお楽しみ頂ければと思います。

 あるとき降り出した塩の雨によって、地表のほとんどが埋もれてしまった世界。
 あらゆる交通や物流が麻痺し、満足に水や食糧が手に入らなくなってしまった絶望のなかで、多くの人が衰弱し命を落とし、塩の塊と化した身体は崩れて白い海に没んでいく。
 そんな世界の片隅に生きた恋人たちの姿があった。女性の身体もとうとうすべてが塩へと形を変え、抱き寄せた男性の腕の中で完全に崩れ去ってしまう。恋人を失った彼は、同じ場所で死んで恋人の残した塩の粒と混ざり合って眠ることで、彼女と永遠を共にしようと決意する。
 しかし、この世界にはまだ他の人々の命が根付いている。希望を見出して未来に向けて生き続けようとする恋人たちもいるかもしれない。